2023.01.28てんかん~ その2

「てんかん」についてその2
今回は、「てんかん」の診断と治療についてお話ししていきましょう。
発作が起きた場合、何が原因で起きているのか究明していく必要があります。

てんかんの診断

1問診
2身体検査・神経学的検査
3血液検査・尿検査
4(必要に応じて)レントゲン検査・超音波検査・心電図検察etc
5(必要に応じて)MRIと脳脊髄検査
6(必要に応じて)脳波検査
以上が大まかな流れになります。
先にもお話ししましたが特発性てんかんは「明らかな異常がない」ことが診断に繋がる、除外診断になります。
除外診断とは、色々と検査をして他の病気を除外し、最後に残るものを診断名とするということです。
つまり検査をすればするほど診断精度は上がりますがその分費用もかさみますので動物への負担も

大きくなってしまいます。
むろん確定診断のためには必要な検査はすべきですので当院ではオーナー様としっかりと話し合い、

必要な情報・適切な検査のご提案をさせていただき、今後の方針に繋げていくよう心がけております。
診断にはオーナー様からの情報も大変重要になりますので問診例を以下に示します。
◻︎どのような発作の症状だったか?
◻︎初めての発作か?今までにもあったか?
◻︎初めて発作を起こした時の年齢
◻︎1回の発作の持続時間
◻︎発作の頻度は?
◻︎発作を起こす前に気づくこと
◻︎発作後の状態(すぐに回復するのか、発作後の様子は?)
◻︎特別な食べ物や特別な環境
◻︎ワクチン履歴やこれまでの病歴
てんかんの治療の意義
それでは治療の話をしていきますが、その前になぜ治療が必要なのか、その意義についてご説明します。
1てんかん発作を繰り返し起こすことで脳が壊れていくのを防ぐため
発作によって少しずつ神経細胞は死んでいくため認知症が早まる可能性があります。
また重積や重篤な群発により、重大な脳損傷を起こします。
2てんかんの重篤化・難治化を防ぐため
一般的にてんかんは無治療でいると、頻度と強さ(重篤度)が増していきます。
頻度が多くなり、重篤度増すと治療しにくくなります(=難治化)
3動物およびオーナー様のQOLの維持・向上のため
てんかん治療の目標はもちろん、「発作ゼロ!」ですが、実際のところはゼロにすることは難しく,
「日常生活に明らかな異常がなくQOLの悪化を伴わず、発作頻度を6ヶ月に1回(少なくとも3ヶ月に1回)以下の頻度
でコントロールすること」です。

てんかん治療

てんかんの治療法としては以下のようなものが挙げられます。
1無治療(経過観察)
2避妊・去勢手術
3生活環境・誘発環境の改善
4抗てんかん薬療法
5食事・サプリメント療法
6てんかん外科
主に治療には4抗てんかん薬が用いられます。
それでは、一体いつから始めるべきなのでしょうか??
開始時期は以下が推奨されます。
16ヶ月に2回以上に発作がある時
2てんかん発作重積あるいは群発発作の場合
3発作後兆候が特に重篤あるいは24時間以上続く場合
4発作頻度・持続時間が悪化してきている場合
5構造的てんかんが明らかな場合
使用する抗てんかん薬は、基本的には1種類の単剤療法を1日2回からスタートします。
初期用量からスタートし、コントロールできなければ少しずつ増量していき、最大用量でもコントロールできない場合には、多剤の併用となります。
コントロールできているかどうかの判断は、症状の有無と血中濃度(投与した薬の血液中の濃度)を

測定して行います。
発作を起こさないためには、血中濃度が安定していることが重要なので、発作がないからといって

投薬を中断したり、減量することは危険ですので、何かご不安があれば獣医師にご相談ください。
それ以外の治療法についてもご説明します。
1無治療(経過観察)
発作が、数年に一度または、1年に1回あるかないか、と言う場合には,経過観察を行います。
発作の頻度が増えてきた場合や重篤度が増してきた場合に治療開始を検討します。
2避妊・去勢手術
ごく一部のてんかん動物で,性周期により発作が起こる症例がいるためです。
性ホルモン(主にエストロゲン)がてんかん発作との関連が知られています。
3生活環境・誘発環境の改善
主に,反応性てんかん発作を起こす症例が対象になります。
大きな音やフラッシュなどの強い光、トリミングや動物病院に行くと発作が起きる、など誘発要因がわかる場合は
改善すると良いでしょう。
5食事・サプリメント療法
体内でのケトン生成を容易にするMCTオイルを利用した「MCTケトン食」が特発性てんかんの発生頻度・回数を
減少させると言う報告があり、療法食も販売されています。
また、人の小児難治性てんかんでは、カンピナジオール(CBD)オイルが利用されていますが、獣医領域ではまだ
エビデンスがなく、治療法としては確立していませんので今後の報告が待たれます。
6てんかん外科
人の難治性てんかんは、外科手術による発作の抑制が行われています。

獣医領でも少しずつてんかん外科は行われるようになってきましたが、まだまだ症例数は少なく

限られた施設での対応となります。

てんかん発作重積と群発発作の治療管理

重積と重篤な群発発作(1日に5~10回以上の発作)は、最悪の場合命に関わることがあるため,緊急症例(エマージェン
シー)として扱われます。
このような場合には,すぐに動物病院へ連れてきてください!!︎
長時間にわたる発作重積は、脳の損傷に加え心臓・腎臓・筋肉、循環器・呼吸、肺などに障害をきたし

重篤な脳圧亢進、心筋虚血、多臓器不全などで死に至る場合があります。
重積の治療では入院をさせて静脈確保を行い、抗けいれん薬の静脈注射や点滴静注を行います。
薬剤で深い鎮静状態におくことで脳での異常な電気信号がおさまるのを待ちます。
これでもおさまらない場合は、気管内挿管を行ってイソフルラン麻酔に移行して管理することもあります。
いずれの場合でも脳の働きを全体的に抑えるため、自力で呼吸が出来ずに人工呼吸器が必要になる場合もあります。
完全に注射から離脱できるのに数日かかることも多く、その間も薬剤の量や生体反応の調整などをよく見守っていく必要があります。

てんかん動物の予後

現在日本で飼育されている犬全体の寿命は14.3歳と言われています。
特発性てんかんで発作が3ヶ月に一度にコントロールできれば普通の犬と変わらない寿命を迎えることができます。
てんかん、特に特発性てんかんは残念ながら治る病気ではありません。
そのため,その子の一生涯をてんかんと付き合っていく必要がありオーナー様のご理解とご協力・治療への参加が絶
対条件になります。
初めててんかん発作、とくに全般発作を見たときには、誰もが大きなショックを受け,不安になります。
前回も書きましたが、基本的には数秒から1、2分で発作はおさまりますので、危険ですのでむやみに抱っこしたり触ったりせずに、動画を撮る,時間を記録するなど、冷静に対処し見守りましょう。
そして、もしも重積や群発の場合には、すぐに病院に来てください❣